2024年10月1日、日本郵便は約30年ぶりに郵便料金を改定しました。この改定により、定形郵便物(25g以内)は84円から110円に、通常はがきは63円から85円に引き上げられました。この料金改定は、デジタル化の進展による郵便物数の減少や、人件費・燃料費の上昇など、郵便事業を取り巻く厳しい経営環境への対応策として実施されました。
この料金引き上げは、特にダイレクトメール(DM)を活用する企業に大きな影響を及ぼしています。DMは、顧客への直接的なマーケティング手法として広く利用されていますが、郵便料金の上昇により発送コストが増大しました。これにより、企業はマーケティング戦略の見直しや、コスト削減のための新たな手法の検討を迫られています。
郵便料金改定の詳細
2024年10月1日の料金改定で、どれくらい料金が上がったのか?改定内容は以下の表のとおりです。
種類 | 旧料金 | 新料金 | 改定率 |
通常はがき | 63円 | 85円 | 約35%増 |
定形郵便物(25g以内) | 84円 | 110円 | 約31%増 |
定形郵便物(50g以内) | 94円 | 110円 | 約17%増 |
特に通常はがきと定形郵便物(25g以内)の値上げ率が高く、これは企業がDMで頻繁に活用するフォーマットに該当します。
郵便料金割引制度
日本郵便では、大量発送や特定の条件を満たした郵便物に対して適用される割引制度を提供しています。これらの制度をうまく活用することで、郵便料金を大幅に削減し、コスト効率の高い発送が可能になります。主要な割引制度について解説します。
広告郵便料金割引
概要:「広告郵便物割引」は、DMやパンフレットなど、広告を目的とした郵便物に適用される割引制度です。同一内容の郵便物を大量に発送する際に適用され、通数が多いほど割引率が高くなります。
対象:・内容が広告や販促情報であること(請求書や通知書は対象外)
・郵便物の内容がすべて同じであること
割引率:差出通数に応じて最大37%の割引が適用されます。たとえば、10万通で27%、100万通で37%の割引(定形郵便物・定形外郵便物の場合)を受けられます。
ポイント:・大量発送が前提のため、定期的にDMを発送する企業に適する
・日本郵便の規定に沿った「差出明細書」の提出が必要
割引率の概要:
差出の都度割引(1回の差出通数に対する割引率)
差出通数 | 定形郵便物・定形外郵便物 | はがき |
2,000 ~ | 12% | 8% |
3,000 ~ | 15% | 11% |
5,000 ~ | 18% | 14% |
7,500 ~ | 19% | 15% |
10,000 ~ | 21% | 17% |
15,000 ~ | 22% | 18% |
20,000 ~ | 23% | 19% |
30,000 ~ | 24% | 20% |
50,000~ | 25% | 21% |
75,000 ~ | 26% | 22% |
100,000 ~ | 27% | 23% |
200,000 ~ | 29% | 25% |
300,000 ~ | 31% | 27% |
500,000 ~ | 33% | 29% |
800,000 ~ | 35% | 31% |
1,000,000 ~ | 37% | 33% |
(出典:日本郵便「広告郵便物」)…… 1ヶ月間の差出通数に対する割引率である「月間割引」もある |
区分郵便物割引
概要:「区分郵便物割引」は、差出人が郵便物をあらかじめ郵便区番号ごとに区分して差し出すことで、割引を受けられる制度です。区分作業が簡略化されるため、日本郵便側の作業負担が軽減され、その分割引が適用されます。
対象:・郵便番号順に仕分けされた郵便物
・所定の区分ラベルやタグを使用し、規定に沿って差し出す
割引率:区分方法や差出通数によって異なる(1〜6%)…. 割引加算あり(送達猶予・バーコード付郵便物)
ポイント:区分作業に手間がかかるため、大量発送する企業で専用システムを導入している場合に効果的
バーコード付郵便物割引
概要:「バーコード付郵便物割引」は、郵便物に日本郵便が指定するバーコードを印字することで適用される割引制度です。バーコードの印字により、郵便物の自動処理がスムーズになるため、割引が適用されます。
対象:・郵便物に「郵便番号」を基にしたバーコードを印字すること
・日本郵便が提供するバーコード生成ツールの利用を推奨
割引率:3%
ポイント:・バーコードの正確な印字の必要性。専用プリンタやツールの導入の推奨
・区分郵便物割引や広告郵便物割引と併用可能
郵便区内特別郵便物割引
概要:「郵便区内特別郵便物割引」は、差出郵便局の配達エリア内で配達される郵便物に適用される割引制度です。配送距離が短いため、通常の郵便料金よりも低コストで発送できます。
対象:・差出局の配達エリア内に配達先がある郵便物
・主に地域密着型のマーケティングや通知に利用
ポイント:・エリア限定のキャンペーンや地域イベント告知に最適
・対象エリアを事前に確認する必要あり
送達猶予
概要:「送達猶予」は、郵便物の配達日を通常よりも遅らせることで適用される割引制度です。急ぎでない郵便物を対象にすることで、配送の効率化を図り、その分コストを削減します。
対象:・緊急性の低い郵便物
・配達日を遅らせることに同意が得られている場合
割引率:配達日の猶予日数に応じて割引が適用されます。
ポイント:・配達日を調整できるダイレクトメールや案内状に利用
・配達遅延が顧客満足度に影響を与えない場合に利用
これらの割引制度を組み合わせて活用することで、郵便料金を大幅に削減し、コスト効率の高い発送が可能です。たとえば、広告郵便物割引と区分郵便物割引を併用することで、DMの費用を最大限抑えることができます。
しかしながら、これらの割引制度は、料金改定以前から存在していたもので、基本の郵便料金が上がった事実は変わらず、上がった分だけ、以前よりも発送費用が高くなっています。
特約ゆうメールの活用
「特約ゆうメール」は、日本郵便が提供する企業向けの大量発送専用サービスです。特に、広告やカタログ、商品サンプルなどの発送に適しており、通常の「ゆうメール」に比べてさらにコストを抑えることができる特約契約型のサービスです。特約契約を結ぶことで、発送形態や通数に応じた割引料金が適用され、コスト削減が可能となります。以下に、特約ゆうメールの特徴や利用条件について詳しく解説します。
特約ゆうメールの特徴
料金の大幅な割引:特約契約を結ぶことで、大量発送を前提に通常のゆうメールよりも割安な料金が適用されます。発送する通数や契約内容によって割引率が異なりますが、数千通単位での発送を行う企業には特に効果的です。
重量制料金体系:「ゆうメール」は郵便物の重量に応じた料金体系を採用していますが、特約ゆうメールでは契約内容に応じてさらに柔軟な料金設定が可能です。
発送可能な内容物:特約ゆうメールで送付できるのは、冊子や印刷物、商品サンプルなどです。これには以下が含まれます:
- カタログ、チラシ、パンフレット
- 書籍や小冊子
- 商品のサンプル(軽量品)
- その他広告関連の物品
追加サービスとの併用:特約ゆうメールは、他の郵便サービス(例えばバーコード付郵便物割引や区分郵便物割引)と併用可能な場合があり、さらに割引を受けられることがあります。
利用条件
特約ゆうメールを利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
事前契約が必要:特約ゆうメールは、企業と日本郵便との間で特約契約を締結することが必要です。契約の際には、発送予定数や内容物、頻度などを申告します。
大量発送が前提:通常、特約ゆうメールは1回あたり数千通以上の発送を条件としている場合が多いです。通数が少ない場合は、通常の「ゆうメール」を利用することになります。
内容物の制限:
特約ゆうメールの対象となる内容物には、以下のような条件があります:
- 冊子やカタログなどの印刷物であること
- 物品サンプルであれば軽量であること(重量制限は契約内容による)
- 「信書」を送ることはできない
梱包および表示の規定:特約ゆうメールで発送する郵便物には、差出人名や内容物の種類を明記するなど、日本郵便の規定に沿った梱包・表示が必要です。
これらの条件を自社で満たすのは難しいと思います。ですが、特約運賃契約を結んでいるDM発送代行業者に発送を委託することで、通常の割引料金よりも安い費用で、発送することが可能になります。この場合、発送物の差出人表記を、特約ゆうメール契約企業名にする必要があります。しかしながら、発送を委託する企業の社名の併記が可能なため、その点は特に問題ありません。
日本においてマーケティングにダイレクトメールを利用する場合、日本郵便と特約運賃契約を結んでいるDM発送代行業者に発送を委託することが、費用対効果の観点から、必須と言えるでしょう。